2014年10月30日に、これから先の東京ディズニーランドと東京ディズニーシーの開発計画がオリエンタルランドから発表されました。
ここではその計画がどんなものなのか、東京ディズニーランドに絞ってみていきましょう。
予算とその使い道は?
この計画は、2015年3月期~2024年3月期の10年間でテーマパーク事業に総額5000億円規模の投資をするというものです。東京ディズニーランドの建設費が1580億円、東京ディズニーシーの建設費がホテルミラコスタを含めて3380億円といわれていますから、物価の上昇を考えても、優に第3パークが建設できるほどの巨費です。
この巨額の開発費がどのように使われるかは気になるところですが、東京ディズニーランドでは主にファンタジーランドの拡張とリニューアルがメインの事業となるようです。
2020年には東京オリンピックも控えていますから、その集客効果を見込んだ上で、国内だけでなく世界中からやって来る観光客にもアピールするようなパークへと改装していくのでしょう。
ファンタジーランドの拡張は可能なの?
プレス・リリースによれば、ファンタジーランドは現在の2倍の面積になり、大型アトラクションも複数導入されるようです。といっても、ファンタジーランドは東はアドベンチャーランド、西はトゥーンタウン、北はトゥモローランドとシンデレラ城前のプラザ、南はバックステージをはさんで東京ディズニーシーのアラビアンコーストと、四方を既存の施設に囲まれているので、現在の2倍のスペースを確保するのはかなり難しいように思えます。
結論からいうと、バックステージとトゥモローランドの一部を再開発して、ファンタジーランドのエリアにする計画のようです。
発表されている再開発のイメージ図をみると、トゥモローランド・テラス、スタージェット、グランドサーキット・レースウェイのあたりまでが、新しいファンタジーランドの一部に組み込まれています。
トゥモローランドの現状
ファンタジーランドが2倍になるために、トゥモローランドは2分の1になりそうですが、これもやむを得ないところがあるのです。もともとトゥモローランドは、ウォルト・ディズニーが1950年代に夢見た未来を描くテーマランドでした。しかし、アナハイムのディズニーランド開園から60年が経った今、トゥモローランドがイメージする未来と現実の21世紀との間には大きな隔たりができてしまっています。
SF映画などで描かれる未来も現実を反映して、科学万能のバラ色なものではなく、サイバーパンク、スチームパンクと呼ばれるような暗いトーンのものが主流になっています。
こういう暗い未来観に対して、ディズニー社はウォルトの時代とは違った夢のある未来をゲストに提供しようとしてきました。
それがレトロ・フューチャーというコンセプトなのです。
レトロ・フューチャーって?
レトロ・フューチャーは、21世紀がかつて想像されたような明るいものではないとわかってきた1980年代に出現した新しい未来像です。それは「SF小説の祖と呼ばれるジュール・ヴェルヌやH・G・ウェルズが考えた砲弾型ロケットやタイムマシンが実用化されていたら」という、19世紀から20世紀初頭の人々が夢見た未来を描くというものなのです。
1992年にオープンしたパリのディズニーランドでは、トゥモローランドをこのレトロ・フューチャーのコンセプトで作り、名称も未来を意味するトゥモローランドではなく、科学技術が発見された時代を思わせるディスカバリーランドに変更されました。
このディスカバリーランドの試みは、世界のディズニーランドにも部分的に取り入れられていきました。
1993年から2002年まで東京ディズニーランドにあったビジョナリアムはもともとディスカバリーランドのアトラクションですし、東京ディズニーシーのポートディスカバリーとミステリアスアイランドは、レトロ・フューチャーのコンセプトで作られたテーマポートです。
このトゥモローランドのレトロ・フューチャー化は、各地のトゥモローランドで少しずつ行われていたのですが、思ったような集客にはつながらず、中途半端なままに終わっています。
ヴェルヌやウェルズの世界に憧れる層は意外に少なかったのでしょう。
トゥモローランドの悩み
そこで、レトロ・フューチャーの代わりに、ディズニー関連の映画で描かれた未来的な世界をアトラクションに取り入れようという試みが始まりました。「トイ・ストーリー」の世界をアトラクションにしたバズ・ライトイヤーのアストロブラスター、「モンスターズ・インク」の世界をアトラクションにしたモンスターズ・インク“ライド&ゴーシーク!”などがその代表になります。
ところが、こういうピクサーの人気アニメを使ったアトラクションも、アトラクションそのものには人気が集まるものの、トゥモローランドというエリア自体に明確なコンセプトがないこともあって、テーマランド全体としては盛り上がらないのが世界各地のトゥモローランドの悩みの種なのです。
活気づくアメリカのファンタジーランド
一方、トゥモローランドと対照的に、ファンタジーランドは世界のディズニーパークで拡張が行われています。これは2000年にナイキからヘッドハンティングされた、ディズニーの商品部門のトップであるアンディ・ムーニーが、ディズニー作品に登場するヒロインたちをディズニープリンセスとして売り出したのがきっかけでした。そこから始まったプリンセス・ブームが、プリンセスたちのホームグラウンドであるファンタジーランドの活性化につながったのです。
すでにカリフォルニアのディズニーランドでは、2013年にプリンセスをテーマにしたファンタジーフェアという新エリアがオープンし、シアターでは「美女と野獣」のベルや「塔の上のラプンツェル」のラプンツェルが登場するショーが行われているほか、プリンセスがグリーティングするロイヤルホールも作られています。
フロリダのマジック・キングダムでは、東京ディズニーランドより一足早くファンタジーランドの拡張とリニューアルが行われました。こちらはトゥーンタウンを廃止してニュー・ファンタジーランドとするなど、カリフォルニアより大がかりなリニューアルになっています。
このニュー・ファンタジーランドは、従来のファンタジーランド的ストーリーブック・サーカスと、プリンセスを前面に押し出したエンチャンテッド・フォレストの2つのパートに分かれています。また、アトラクションだけでなく「美女と野獣」のビーストのお城を再現したビー・アワ・ゲスト・レストランが作られるなど、新しいテーマパークが作られたほどの変化になっています。
東京ディズニーランドの方向性は
東京ディズニーランドは、もともとマジック・キングダムのコンセプトを生かして作られているので、リニューアルするファンタジーランドは、このニュー・ファンタジーランドの要素を取り入れたものになるでしょう。そして、10年という時間差があるので、ニュー・ファンタジーランドよりさらに進んだテクノロジーを駆使した、いまだかつてないテーマランドになることは間違いないでしょう。
まとめ
2015年3月期~2024年3月期の10年間に、総額5000億円規模の投資額で東京ディズニーランドと東京ディズニーシーが大きく変化する予定です。東京ディズニーランドではファンタジーランドが2倍の面積になります。
だいぶ先にはなりますが、夢は膨らむばかりですね。
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